「サヨク(さよく)」が在特会(ざいとっかい)を生(う)んだのか?
はじめに、在特会は2007年12月に始動し、09年に京都第一初級学校を襲撃し、11年に朝鮮大学前で「朝鮮人を殺しに来た」などと叫び、いたるところで民族差別・暴力を繰り返すような活動をしている。では、在特会がこのように台頭してしまった背景は一体なんであったのか。それを論考するにあたって、しばき隊の中心人物である野間易通氏は以下のように発言している。
『@kdxn 慰安婦にしろ南京にしろ「在日特権」にしろ拉致問題にしろ、全部口実にすぎないんだから表層だよね。歴史認識問題でネトウヨが勢いづいたことの片棒を担いだのは、間違いなくネトサヨ。』(https://twitter.com/kdxn/status/319783193324687360)
『在特会が誰彼かまわず浴びせる「反日サヨク」という罵声はほとんどの場合的外れなものだけど、実際にはごく少数、戯画化された「反日サヨク」そのまんまのやつが存在するんだよ。米津篤八とかを筆頭に。在特会的なものはそのカウンターとして生まれている。』(https://twitter.com/kdxn/status/307339954139328512)
ここで、野間氏は在特会的なものは「反日サヨク」「ネトサヨ」によって生まれたと断言している(在特会’的’なものとは何を指しているのか分からないが在特会が含まれていると考えて妥当であると思われるので、ここでは在特会のみに焦点をあてる)。また、ここで「反日サヨク」「ネトサヨ」(以後はヘサヨを多用している)については、
『@houseportceo ここで言う「サヨク」とは、右翼とつきあいのある人間がこんな行動をしても無駄だとか、植民地主義反対の理念がないと無意味だとか、必死でナンクセをつけて妨害をしようとしている自称リベラルの人々です。ここ2〜3日ずっとやってますね。』
(https://twitter.com/kdxn/status/298754817860460546)
『日帝がどうの、植民地主義がどうのと頭でっかちのうわずった寝言ばかり言い、協力者を足蹴にして誹謗中傷し、日本人大衆を蔑んでばかりいたから、誰もおまえらに共鳴しなかった。クソ左翼の袋小路をそのまま体現してたわい。今さら偉そうに憤って見せるな。@ANTIFAchegewalt』(https://twitter.com/kdxn/status/339382388381601792)
上述しているような、『たとえば「植民地主義」がどうのこうのというサヨク』という認識であると考えて間違いないと思う。
では、実際、在特会が生まれたのは彼が言う「サヨク」に原因があるのだろうか。一応、在特会のHPに掲載されている在特会の概要(http://www.zaitokukai.info/modules/about/zai/speech.html)では、
在日特権問題は突き詰めれば、戦後六〇年以上の自虐史観に基づく極左思想の蔓延が生み出した「日本を絶対悪とみなす加害者史観」という病的妄想にたどり着きます。
「日本が全て悪いのだから、在日のいうことを聞いてあげよう」
と訴える狂気としか思えない極左思想を排除し、冷静に歴史を振り返り、日本が過去の歴史において何らとして朝鮮に頭を下げるいわれなどないことを周知していかなければなりません。
日本国民が不必要な罪悪感を払拭できたときが、朝鮮問題・在日特権問題を解決する第一歩となるのではないでしょうか。
と書いてある。たしかに、在特会自身、「自虐史観」に基づく「極左思想」の蔓延が「加害者史観」という病的妄想を生みだし、日本国民の不必要な罪悪感の払拭が「朝鮮問題・在日特権問題」への解決の第一歩であると述べている。が、ここで在特会が述べている「極左思想」とは、「日本が朝鮮に悪いことをした」と少しでも思うような思想(ですらないか)であり、野間氏のいう「反日サヨク」とは明らかに違う。
繰り返すが、野間氏は「歴史認識問題でネトウヨが勢いづいたことの片棒を担いだのは、間違いなくネトサヨ」「在特会的なものはそのカウンターとして生まれている」と述べており、「サヨク」のことは「植民地主義反対の理念がないと無意味だとか、必死でナンクセをつけて」「日帝がどうの、植民地主義がどうのと頭でっかちのうわずった寝言ばかり言い」としている。では、仮に一万歩譲って、そのような「サヨク」が「植民地主義」どうこういうことによって在特会が台頭したとしても、そもそも日本による侵略戦争・植民地主義を批判することが排外主義の台頭につながっていること自体がおかしいのではないだろうか。それはやはり、戦後日本が自らの行った侵略戦争・植民地支配を一切反省することなく、率先して歴史修正言説を唱えていること。天皇制を維持し、日の丸・君が代を国旗国歌としていること。政府・警察が一体となりながら朝鮮総連・朝鮮学校を弾圧し、経済制裁等の朝鮮民主主義人民共和国に対して敵視政策をとり、無年金問題や挙げればきりがないほどの朝鮮人個人の狙い撃ちなど朝鮮人に対して差別・弾圧をふるい続けていること。民間日本人による朝鮮人に対する就職差別や通名強制、住居拒否等の差別と政府によるそれらの放置と助長。マスコミによる「北朝鮮バッシング」などの偏向報道。そして多くの「普通の日本人」がそのような政府や日本のあり方を「支持」し、日常的に意識的・無意識的に差別をしている。そのように100年以上にわたって日本における植民地主義がいまだに継続しているからこそ「植民地主義」を批判する者が「極左」とし避けられ、日本全体に歴史修正主義・排外主義・レイシズムが途切れることなく当然のように蔓延っている。そのような状況からこそ在特会が台頭したのである。
さらに、在特会の台頭に関して、「日本社会の閉塞感」であったり、「格差が今まで以上に拡大し」といった、「貧困がもたらしている」という指摘も見受けられる。たしかにそれも一要因になりうるだろうが、そうだとしても一要因にすぎない(また、「貧困」と「民族差別」を安易に結びつけることは新たな差別をも生み出すことに繋がる)。たとえ「貧困」や「閉塞感」が一要因だとしても、その「貧困」や「閉塞感」に対する矛先がなぜ、政府や富裕者等に向かわず、朝鮮人に対して向いているのか。やはりそれは先ほども指摘しているように、政府やマスコミ等を含む日本全体が植民地主義や朝鮮に対するレイシズムを克服できてないからであり、克服するつもりもないからである。在特会は決して「異端」なものでなく、日本全体が日本の植民地主義・レイシズムを問わない中、「普通の日本人」が街頭に出てきただけの話であって、だからこそ、「サヨク」の言うように日本の植民地支配を問わなければいけないのではないのではないか。にもかかわらず、しばき隊では「敷居」をさげるために、「サヨク」の言うような言説を嫌いながら(というよりも積極的に否定しながら)在特会に対してカウンター活動をしているが、それらを問わないまま、在特会を仮につぶしたとしても「新たな在特会」が出てくるだけだろうし、「異常な」極右と「サヨク」を排除した、いまだに続く日本による植民地主義を「支持」する「普通の日本人」が生きやすい「総右ニッポン」になるのではないだろうか。